紫色の夢の跡

日々考えたことや本の感想などを、地に足がつかないまま 書き綴ります。

ミステリアスも楽じゃない(谷崎潤一郎『刺青・秘密』)

崎潤一郎の作品は、女性のメーンキャラクターが出てこない方が楽しめる!

 

短編集『刺青・秘密』を読んで気づいた。

前に読んだ『痴人の愛』も『細雪』も、文章は華やかだし内容は濃いし、とっても読み応えはあったんだけど、いかんせん女性キャラが鼻について物語から引いてしまった。

ナオミも雪子も美人でなければ成り立たないキャラクターであり、裏を返せば容姿を取り除いたらなんの魅力も残らないと思う。

作中で問題児扱いされている妙子の方が、生活力や行動力があってよほど魅力的ではないか。

 

……いや、美人というだけで問答無用の価値があるという谷崎の信念なのかもしれない。

 

じゃあいいのか。

 

納得したからやっと『刺青・秘密』の話にいける。収録されている7つの短編のうち、特に面白かった『秘密』のあらすじ(ネタバレ)は以下。

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 激のない怠惰な生活に飽き、不思議で奇怪な出来事を求める男が、女装して夜の街に繰り出す話。(一人で部屋にいる時に、意味もなくミッキーマウスの耳を着けてテンション上げるみたいなものか。気持ち分かる。)

はある夜、昔関係を持ったT女と偶然再会する。T女の家を訪ねる約束を取り付けるものの、T女は自宅の場所も現在の立場も明かさない。彼女の自宅までは、目隠しをして人力車で連れて行くという徹底ぶり。なぜなら、男は正体が分からない「夢の中の女」という存在を面白がっているだけで、現実の平凡な姿を知られれば、捨てられるのは明らかだったから。現にラストで謎が解けた時、男はT女を捨て、より血だらけの快楽を求めていくことになる。

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愛では相手に全てを晒け出さず、ミステリアスな部分を残すべしって、何かで読んだ気がする。その方が飽きられないし、相手に自分を追いかけさせることができるから。なるほど『秘密』の展開は、その説が正しいと証明している。でもずっとミステリアスであり続けるって、

 

そりゃ無茶だよ。だって、人間だもの。

 

作品から考える、谷崎が惹かれる女の条件①美人②ミステリアス③佐藤春夫に興味ないこと。

谷崎ぃ……。

 

 

刺青・秘密 (新潮文庫)

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